2023年からの部活動の地域移行が進む背景や課題について解説
コロナ感染症が蔓延したあたりから一気に話題となった、公立中学校では部活動改革として、段階的に地域のスポーツ団体などに運動部を移行する「部活動の地域移行」が実施されることについて解説を行っていきます。それって大丈夫?部活動をなぜ地域に移行する?不安な面を出来る限りお伝えいたします。
部活動の地域移行とは?
まずはじめに部活動の地域移行とは2022年6月にスポーツ庁での有識者会議で提言されました公立中学校における休日の運動部の部活動を外部に移行する部活動改革の1つになります。移行先には地域のスポーツクラブや民間企業、スポーツ少年団などが想定されており、移行先では複数の中学校の生徒達が一同に集まることが可能となります。何故、このような事が導入されるのかという原点には、①少子化の深刻化 ②指導者である教員の「業務過大負担」といった2つが大きな要因となっています。
【原点】①少子化による部活動の減少 ②教員の働き方改革
部活動指導員が不必要になる?(ブログオーナーも現在、部活動指導員)
上記「②教員の働き方改革」の一環として、近年、部活動指導員というのが採用されてきました。
これは2017年度から導入されたもので、校長の監督下で顧問に代わって部活動での指導や引率ができる、学校外の人員です。以前から中学校の部活動では、その学校を卒業したOB(卒部生)が指導にあたったり、ある特定競技の指導知識を持った地域の方々がボランティアで来てくれるという事がありました。
しかしこれには問題があり、外部指導者はあくまでも技術指導を行うための人材となる為、例え毎日、指導にあたり3年間、子供達の為に身銭を切って協力していた人間だとしても、大会などへの引率などは認められていませんでした。(これは結構悲しいですよ。。)
しかし、部活動指導員の制度導入後、部活動指導員は中学校の部活動における技術指導を行うほか、大会などでの引率も担当する学校教員の1人という位置付けとなっており、そういった面でも関われるようになりました。(但し、基本的には学校長から許可は降りず、部活動指導員のみで引率する事はほとんどありません)
又、「部活動指導員」は学校側から教育委員会に申請をしてもらう事で、「教育委員会」から報酬がもらえます。
(だいたい1日1時間~2時間程度。時給1,000~1,300円)
※しかし、学校の部活動は夕方から活動開始がほとんどなので、サラリーマン勤務の方は、移動などの前後の時間を考えると、だいたい4時間程、拘束される為、実際の時給は500円以下です。本当にボランティア精神が無ければ出来ません。
しかもスーツから指導する服装に着替えて、1時間半後にまたスーツに着替える。屋外スポーツでは身体についている砂を落とすなど、本当に大変です。
今回、「部活動の地域移行」によって、当初は部活動の休日のみのスタートになる様だが、平日もクラブチームなどの練習が定期的に入ってくるようになれば、部活動指導員はほぼ「絶滅危惧種」になるのでは?と考えております。
「部活動の地域移行」のメリットとデメリット
現在の中学校学習指導要領では、部活動は、「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意する」とされています。しかし、地域移行は学校外で実施されるものです。当初は休日のみの移行ですが、次の段階では地域の状況などによって平日の部活動も地域移行が進められることとなります。
その結果、地域移行によって学習指導要領で示されている部活動の位置づけが変わってしまうことが考えられるのです。教育の一環であった部活動が学校外で行われると、今まで学校の教育の一環として、考えられてきたスポーツ活動が全く別の物に変わってしまいます。
【メリット】
① 生徒は、より専門的・技術的な指導を受けることが可能になる。
② 生徒は、部活の活動時間とは別に参加できる大会が増えたり、練習量が大きく増える。
③ 生徒は、学校とは別で、人間関係を広げる事が出来る。
④ 教員は、授業準備やその他の業務に充てる時間を増やしたり、残業時間を減らしたりできる。
⑤ 教員は、経験のない競技を受け持つことがなくなり、ストレスや負担が軽減する。
【デメリット】
① 生徒は、一環した指導が受けられない可能性がある。(地域によっては、適切な人材確保が出来ない)
⇒強豪といわれる部活動などは、その指導にあたる教員がいてからこそ成り立つ物であり、その教員が指導に当たらず、地域の民間人が指導をする場合は、一概に部活動より指導レベルが上がるとは言えず、又、団体競技であれば尚更ですが、一環した指導方法が取られず、生徒が混乱する場合があります。(キックの蹴り方?!タックルの入り方?!走り方?!など指導者によって指導方法はさまざまである。。)
② 保護者は、費用や送迎など、家庭の負担が大きくなる。
⇒会費や指導料、施設利用料などの支払いが今後は確実に発生します。今までよりも、家庭の経済的負担は大きくなるでしょう。部活動であれば、月々あたり数百円~1,000円程度で済んでいたものが、民間クラブに通う事で月+5,000円~10,000円程度は見ておかなければいけないでしょう。又、学校ではなく、離れた場所で行うことになれば、送迎も必要になります。家庭の都合(ほとんどの家庭が共働きかと)によっては、送迎が難しい場合も多々あるかと思います。経済状況や家庭環境を理由に参加できなくなる生徒が生じることも予期されます。
しかし、どこまでいってもマイナースポーツ(ラグビー)などは昔から指導者はボランティア活動が中心です。現在、勢いよく設立されている中学生を対象としたクラブチームも月々1,000円~2,000円程度の会費に抑えており、そこに携わる指導者はボランティアといった事が多いのが現状です。(スポーツ保険料や、個々の競技団体に支払う個人登録料、試合を行うチームのユニフォーム代などでギリギリの運営)
③ 教員は、部活動指導を生きがいとしてきたにも関わらず活動の場が無くなる。
⇒教員の負担軽減という大前提がある一方で誰も気にしていない点です。教員を目指した際の理由として、部活動の経験が大きく関係している方も多いと思います。サッカーの監督に憧れて、バレーを指導してくれていた、あの厳しくも優しい先生に憧れてなど。そういった教員は活動の場が無くなる事で、今後、学校教育に更に熱心になってくれる一方、ヤル気を失う教員も確実に出てくるでしょうし、それに伴う教員へのカウンセリングなども必要になってくる為、教育委員会としての負担分野は増えるのではないかと考えております。
④ 教員の負担が更に増える?!
⇒先程、記載した負担軽減が大前提にあるにも関わらず、地域によっては教員の負担が確実に増えると考えております。自らが関わる中学生が、いざ地域へ活動の場を広げた場合ですが、教員は本当に休むのでしょうか?私の考えとしては熱心な教員であればあるだけ、現在まで土日のいずれかは休んでいた活動日も、地域のチームに足を運んで、同じように指導する場面が増えてくるのではないかと思います。確かに、既に地域移行を開始した部活動でも、教員はあくまで関わらないという方針ですが、実際には指導に関わっている事がほとんどです。これを安易に考えてしまうと、今後平日の夜間はもちろんの事、休日は土日の全てをスポーツ指導にあたる事となり、更に負担は増えていく事でしょう。(せめて、教員へ報酬が渡せる正式なルールがあればまだしも現在は無いですね)又、③④はメディアでもほぼ取り上げられていません。。普通に考えると分かることなのに。。
まとめ
部活動の地域移行にはメリットとデメリットが存在します。しかし、新たな環境での成長機会や地域の特性の活用など、生徒たちは多くのメリットを享受することができるかと思います。一方で、デメリットも多々あり、記事には記載しておりませんが、環境の適応やチームの結束力の維持などの課題もあります。生徒たちは新たな環境への適応力や柔軟性を発揮しながら、部活動を充実させるために努力することが求めれますね。この改革が、我々の未来への懸け橋となっていく生徒たちにとっても、教員にとっても、よりよいものになりますように。今後の動向も気にしながら、又、追って記事を書いていこうと思います。
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